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レポート熊本市様「おとなりさん」ユーザーインタビューReport

2025-10

熊本市様「おとなりさん」ユーザーインタビュー

浦本 匠

熊本市 総務局 デジタル部
デジタル戦略課 参事浦本 匠

林田 紀

熊本市 総務局 デジタル部
デジタル戦略課 主幹林田 紀

自治体業務の現場においても関心、活用への期待が高まっている生成AI。当社も2025年4月に生成AI型マニュアルシステム「おとなりさん」をリリースし、自治体職員様の業務効率化の支援に取り組んでいます。今回は「おとなりさん」を庁内で積極的に活用し、DX推進に取り組まれている熊本市様のインタビューをお届けします。

「おとなりさん」導入の背景
~決め手はUI/UXの良さと料金体系~

―――熊本市様は当社の総合行政システムユーザー様ではないですが、いち早く「おとなりさん」についてお問い合わせをいただき、導入に至っております。まずはどういう経緯で知っていただき、導入に至ったかのお話から伺えますでしょうか。

林田氏:

熊本市では2023年から「Microsoft Copilot」を導入し、AIの利用を促進していました。そこでは検索や文章の要約といった一般的な利用にとどまっていたのですが、アンケートなどを取る中で、やはり庁内に特化したAI が必要だという声がかなり上がってきていたこともあり、RAGを使ったサービスを探していました。そうした中で、RKKCSが生成AIサービスの開発に取り組んでいるというネット記事を見つけ、「これもRAGを使っているのでは」と問い合わせをしたのがきっかけです。

―――生成AI が必要というお声が庁内から上がってきていたとのことですが、導入前には具体的にどのような業務課題を感じていらっしゃったのでしょうか。

林田氏:

やはり行政の業務は国からの通知や、度々の法改正があり、それを調べるのにかなりの時間を要します。また庁内業務においても、契約事務や福利厚生ではどこに資料が保存してあるかが分からず、それを探す手間がかかっていました。

Microsoft 365を導入したことで、庁内のペーパーレス化はだいぶ進んできてはいるものの、いざPDF化した資料を探そうとしても、検索ワードが正確に合致しないためヒットせず、結局フォルダの中から探し出す手間がかかってしまうこともあります。そうした「調べる」「探す」時間をAIで効率化したいと考えていました。

―――数あるAIサービスの中から「おとなりさん」を選ばれた理由は何でしょうか。

林田氏:

RAGを使ったサービスの中から2~3サービスに絞り込み比較検討をしました。その中でも重視したポイントは「複数のLLMが使えること」「直感的に利用できるUI/UXの良さ」「料金体系」です。サービスを庁内展開するためには、推進部署としてはサービスの操作性など利用のしやすさが重要と認識しており、「おとなりさん」はマニュアル等を見ることも無く操作できるつくりとなっているためかなり良い印象を持ちました。

また、料金体系については、多くのサービスが従量課金制なのですが、行政の場合、予算を確保する際に従量課金だと扱いが難しくなります。年度途中に超過した場合、利用できないですし、追加の予算を要求するというのは非常にハードルが高いからです。

その点「おとなりさん」は行政が予算化しやすい固定の料金にしていただいているので、最終的にはそれが決め手のひとつになりました。

図1: 質問回答機能画面:会話をするように質問でき、質問ごとに複数のLLMから選択が可能

「おとなりさん」の利用状況と効果
~5か月で2→14業務に利用拡大~

―――現在「おとなりさん」はどのような部署、業務で主にご利用いただいていますか。

林田氏:

初めは原課からの要望もあり、児童相談所と生活保護の業務で利用を開始しました。使い方としては、住民応対をする中での実務マニュアルです。過去の応対履歴や法で定められた応対基準を読み込ませ、このようなケースではどういった対応をするかというのをその場で検索し、その対応基準を見ながら住民応対をしています。

その後、契約事務、会計事務、人事や福利厚生など全庁的に使えるものに拡大し、現在は14の業務で活用しています。相談や問い合わせから導入することもあれば、「ここでも使えそうだ」という部署には、こちらから積極的に営業もしています。

全庁アンケートでも利用意向を聞いていますが、日常生活の中でもAIに触れる機会が増え、職員にとっても少しずつ身近になってきているため、そういう業務で使えるならこの業務でも使えないかと考え相談してくる職員は増えていると感じます。

―――「おとなりさん」には「質問回答機能」「キーワード検索機能」「文章要約機能」の3つの主な機能がありますが、どのような活用方法が一番多いのでしょうか。

林田氏:

やはり「質問回答機能」が一番使われていますね。あとは「要約機能」も使われているのではないかと思います。最近は法改正が多く、それに伴い国からの通知がかなり多いため、その要約で使う場面は多いと思います。

浦本氏:

「キーワード検索機能」については、現在はナレッジをためている段階と言えるかと思います。良い回答が出てきたときには、できるだけグッドボタンを押すように声かけをしていますので、そのグッド回答がたまってくると、さらに有能な機能になるのではないかと考えています。

図2: キーワード検索機能画面:資料の件名だけでなく中身まで検索できる

―――導入している部署からは、実際に使用してみてどのようなお声があがっていますか。

浦本氏:

回答精度が高いという声を多く聞きます。また資料の格納方法や質問の仕方に慣れることで、より良い回答が得られるようになったとの声もありました。先ほどPDF化した資料を探し出すのに時間がかかっていたということをお話ししましたが、その点についてもワードが完全に一致しなくても検索できるため、そういった場面では効率化できているのではないかと思います。

現在は実証中のため、明確な数値は出ていないのですが、今後来年度の予算要求に合わせアンケートを実施し、具体的な業務効率化の状況や貢献度を数値で出したいと考えています。

―――実際に使ってみて、想定外のメリットや使い方の発見などはありましたか。

浦本氏:

起案文のチェックにも使えることは想定外の発見でした。当初はマニュアルを読み込ませて、その中に書いてあるものを検索するという使い方を想定していたのですが、こちらが作成した文章が例規に合っているかまで見てくれるのは、とても有効だと思いました。

我々デジタル戦略課の業務で言うと、システム関係の契約を締結する際、実施伺い文が原課から回ってくるのですが、それをおとなりさんに入力して、予め読み込ませておいたマニュアルに沿って必要な項目の抜け漏れや間違いがないかをチェックしています。かなり早くチェックができるので、そこはとても助かっています。この使い方を他の実証参加部門に共有したところ、監査部門から監査業務に使ってみたいという声もあがりました。

林田氏:

AIによるチェック機能は未然の防止につながると思います。監査や契約事務において、事前におとなりさんに質問して確認できることで、職員の心理的な負担軽減にもつながりますし、事務処理ミスも減らせると思います。

他にも受けている相談の例として、法制課からは過去の判例や判断材料を学習させ、同じような事例が起きた際に、過去どのような判断をしたかの情報が検索できるようにしたいという話を受けています。現在ベテランの職員が一人いますが、その職員も当然異動する可能性があるので、そこにAIを使っていきたいということでした。

―――「まるで隣のベテラン職員」というのは、まさにおとなりさんが挙げている特徴のひとつでもあります。その人が持っている暗黙知や経験知をできるだけAIに学習させ、代わりが利くようにするということですね。

浦本氏:

そうです。自治体はどうしても異動が多いので、長くその業務に携わるベテラン職員がいたとしても、異動してしまうと次の世代がそこを担っていかなければいけません。ですから長年蓄積してきたナレッジをおとなりさんに学習させ、おとなりさんがベテラン職員のように相談役になってもらえるとすごくいいなと思っています。

林田氏:

私自身、10年前にいた部署の仕事のことで、未だに問い合わせを受けることがあります。引継ぎをしっかりしなさい。と言われてしまうとそれまでなのですが(笑)、当時の資料やマニュアルを読み込ませることで、答えてくれそうな気がするので、そういった意味でもナレッジをためて、そこを検索することで、引継ぎ業務の負担軽減にもなると感じています。

図3: 文章要約機能画面:コピー&ペーストまたは資料アップロードで瞬時に要点が把握できる

「おとなりさん」へのさらなる期待
~利用しながら「成長させていく」~

―――今後、さらに期待する機能や使い方などはありますか。

浦本氏:

先日福祉課から相談があった事例で言いますと、読み込ませるマニュアルに計算式やフロー図などが入っていることがあるのですが、そうした推論や計算までおとなりさんの中でできるようにしてほしいという声がありました。生活保護、児童相談所などでは計算をして答えを出す業務が多いため、マニュアルや例規に沿って計算してくれる、あるいは計算した内容に間違いがないかチェックしてくれるような機能が加わると、さらに職員の負担軽減につながると思います。

―――最後に、今後「おとなりさん」の活用を検討されている他の自治体様に向けて、メッセージをいただけますでしょうか。

林田氏:

人が忘れることを記憶できるのがRAGの最大のメリットだと思いますし、これまでのAIと違い「言葉のゆれ」があっても質問に対する回答が得られるものになっていますので、まずは使ってみることが大事だと思います。

その際、万が一期待通りの回答が得られなかったとしても、プロンプトの入力の仕方を変えたり、質問を深掘りすることで欲しい回答が得られるようになりますので、二度三度質問して確認してみていただきたいです。

利用する職員の生成AIリテラシーを向上させることも大切ですが、おとなりさん自体もエンジンですので、資料の格納方法や質問の仕方含め、「『おとなりさん』を成長させていく」気持ちを持って利用することが必要だと思います。

浦本氏:

他にもRAGを使った生成AIのサービスを展開している企業は多数ありますが、RKKCSは私たちの要望に親身になって対応くださり、機能もどんどんアップデートしてくださっているので、今後さらに使いやすいサービスになっていくだろうと期待しています。

また先ほどもお伝えした通り、料金体系も自治体向けになっているので、そこは他の自治体様でも有効なのではないかと思います。

開発責任者より

熊本市様は当社が「おとなりさん」をリリース発表して間もない頃にご連絡を頂戴し、AI活用に対する熱い想いと現状の課題を打ち明けてくださいました。デジタル戦略課様だけでなく、たくさんの業務主管課の皆様が様々な業務現場で積極的に活用しようとしてくださっており、当社開発担当者も多くの学びをいただく日々で大変感謝しております。

2025年現在は、急速に進化するAI技術に利用者がついていけるかどうかの利用者リテラシーが問われている時だと言われています。熊本市様のようにAIに関する深い知見を持つパートナー様とご縁をいただけたことは、当社にとっても大変有難く、既に新たな利用シーンのアイデアも多数生まれようとしております。この場を借りて、熊本市様には改めて御礼申し上げます。

当社はお客様の課題認識と伴走し、ともに日本のAI活用シーンを盛り立てていくため活動をしております。

同様に課題を感じていらっしゃる自治体様やその他企業の皆様も、まずはお話しだけでも、どうぞお気軽に当社までお問い合わせいただけますと幸いです。

社長室 部長「おとなりさん」開発責任者 徳山 泰之
社長室 部長「おとなりさん」開発責任者 徳山 泰之